コカ・コーラボトルを見つめるサンタクロース

「赤い服に白いヒゲ」サンタクロース作品アーカイブス

「赤い服に白いヒゲ」のサンタクロースを
生み出した画家の貴重な作品アーカイブス!

真っ赤なビロードや白い縁取りのコートに白いふさふさのあご髭。

陽気な笑顔のサンタクロースは、いまや、クリスマスに欠かせない存在ですね。ところが、現在の私たちがイメージしているこのサンタクロースは、ずっと昔から存在したわけではありません。イメージを確立させてきたのは、そう、「コカ・コーラ」のクリスマス広告なんです。同時に、「コカ・コーラ」の広告を通して現代のサンタクロースを生み出したのは、ハッドン・サンドブロムという名の画家でした。

今回はクリスマス企画として、サンドブロムが1931年から1964年にかけて描いた代表的な作品をご紹介しましょう。

作品アーカイブス

作品その1(1931年)

サンタのイメージを決定づけた処女作品

1931年、コカ・コーラ社は広告用のサンタクロースの絵をサンドブロムに発注します。当時のサンドブロムの報酬は、1作あたり1,000ドル。自動車が700ドルで買える時代でしたから、相当な高待遇と言えるでしょう。

作品を制作するにあたり、サンドブロムはクレメント・C・ムーアによる1822年の有名な詩「A Visit From St. Nicholas(聖ニコラウスの訪問)」を参考にしました。そして、この詩で描写されている聖ニコラウス像が、陽気で親しみやすく、恰幅の良い人間味あふれるサンタのイメージの土台となったのです(ちなみに、サンタクロースの服が赤いのは『コカ・コーラ』を象徴する色だからとよく言われますが、サンドブロムが描く前にも、赤いコートを着たサンタクロースの絵は存在していました)。

この作品は、サンドブロムが描いたサンタクロース第1号になります。1931年12月の冬の広告に登場したことで、夏の清涼飲料というイメージの強かった「コカ・コーラ」が、1年中どの季節にもふさわしい飲み物であると認知されるようになったのです。

残念ながら、サンドブロムが描いたこの作品のオリジナルは残っていません。

コカ・コーラのグラスを持つサンタクロースが描かれた広告

作品その2(1936年)

大恐慌時代の人々を癒したサンタ

シャツの袖をまくり上げ、袖口から赤い下着がのぞくサンタクロースのリラックスした様子が描かれているのは、処女作から5年後の作品。この広告が登場した時期、アメリカは大恐慌のさなかにありました。人々は幸せなひとときを思い起こさせてくれるサンタクロースの姿に心を癒されたことでしょう。

サンドブロムがサンタクロースのモデルにしたのは、友人のルー・プレンティスという名の引退した営業マンでした。プレンティスが亡くなってからは、鏡に映したサンドブロム自身をモデルにして描こうとキャンバスに向かいましたが、最終的には写真を素材に用いるようになりました。

シャツの袖をまくりコカ・コーラを飲む、リラックスしたサンタクロースの広告作品

作品その3(1937年)

サンタは「コカ・コーラ」が大好き!?

この作品では、サンタクロースは再び赤い上着をまとっています。冷蔵庫から「コカ・コーラ」とターキーを取り出すために脱いだのか、手袋はベルトに引っ掛けられています。

こちらの作品のように、サンタクロースのために「コカ・コーラ」を用意したクリスマスイヴの家庭の様子が広告に描かれるようになってからというもの、実際に多くの一般家庭でも同じことが行われるようになりました。「コカ・コーラ」は、クリスマスに欠かすことのできない清涼飲料になったのです。

サンドブロムが描いたサンタクロースの絵は大変な人気を博し、特に熱心なファンは、絵の中に何か変化を見つけるたびにコカ・コーラ社に手紙を書き送りました。ある年には、サンタクロースのベルトが左右逆に描かれていました(これはサンドブロムが鏡を見て描いていたためと思われます)。また別の年には、結婚指輪のないサンタクロースが描かれたことがあります。この時は目ざといファンから「サンタ夫人はどうなったんですか?」という問い合わせが届いたそうです。

ターキー片手にコカ・コーラを飲むサンタクロースの広告作品

作品その4(1941年)

サンタの油絵がコレクターズアイテムに

こちらの作品では、おもちゃを詰め込んだ袋を脇に置いたサンタクロースが、「コカ・コーラ」ボトルを手に、クーラーボックスのそばで一息ついています。サンドブロムが「コカ・コーラ」の広告用に描いた油絵は、雑誌広告、店頭ポップ、ビルボード、ポスター、カレンダー、人形など、さまざまな形で世界に広まっていきました。その多くが、現在ではコレクターズアイテムとしてその価値を高く評価されています。

コカ・コーラのボトルが詰まったクーラーボックスの前でコカコラを飲みながら休憩するサンタクロースの広告作品

作品その5(1949年)

サンタの相棒「スプライト・ボーイ」登場

1940年代になると、コカ・コーラ社は、「スプライト・ボーイ」と呼ばれる少年のキャラクターをサンタクロースと一緒に広告に登場させました。この少年はサンドブロムが生み出したキャラクターで、名前の「スプライト」は妖精を意味する言葉です(コカ・コーラ社が『スプライト』という清涼飲料を発売したのはこれより後、1960年代に入ってからのことです)。

コカ・コーラを飲むサンタクロースと、トナカイの綱を引く、コカ・コーラの王冠を被った男の子

作品その6(1953年)

歴史と伝統のキャッチコピー入りです

「The pause that refreshes(さわやかな憩いのひととき)」は、1929年に初めて使用された、コカ・コーラ社の歴史の中で最も長く使用されているキャッチコピーの一つです。

小人たちがおもちゃ作りに忙しいその合間「さわやかな憩いのひととき」を楽しむサンタクロース

作品その7(1961年)

人間味があふれているからサンタは人気者

「侵入者発見!」と、飼い主たちに報告しようとする犬を、サンタクロースが「しーっ!」と静かにさせようとしているシーンを描いた作品です。

1931年から1964年にかけての「コカ・コーラ」の広告に登場したサンタクロースは、おもちゃを届けたり、そのおもちゃで遊んだり、一休みして「コカ・コーラ」を片手に手紙を読んだり、出迎えに起きていた子供たちと会ったり、はたまた冷蔵庫を漁ったりと、人間味あふれるものばかりでした。

犬に吠えられそうなサンタクロースが、コカ・コーラを片手に静かにさせようと試みる様子の作品

作品その8(1964年)

最後の作品に込められたハピネスへの想い

1964年の作品の中に登場する犬は、サンドブロムの自宅近くの花屋が飼っていた灰色のプードルがモデルになっています。しかしサンドブロムは、絵の中で犬が引き立つようにあえて黒い毛並みで描きました。

また、サンタクロースと一緒に登場している子どもたちのモデルは、これまた近所に住む二人の女の子でしたが、サンドブロムはそのうち一人を男の子として描いています。

そしてこの作品が、サンドブロムが描く最後のサンタクロースとなりました。

サンドブロムの絵画は、コカ・コーラ社の歴史的な事物を集めたアーカイヴの中でも最も貴重な作品とみなされており、これまで多くの国の展覧会に展示され、人々を楽しませてきました。

コカ・コーラを持つサンタクロースと2人の子どもたちが笑いながらプードルを見つめる姿を描いた作品

作品その9(2001年)

サンタ、ついにアニメ化される

1963年のサンドブロムの絵をベースにしたサンタクロースが主役のアニメ作品(TVコマーシャル)が、2001年に制作されました。広告制作を担当したのは、アカデミー賞受賞歴のあるアニメーターのアレクサンドル・ペトロフです。

コカ・コーラ社は今でも、クリスマスの広告やパッケージなどに幅広くサンドブロムが描いたサンタクロースを取り入れています。陽気で優しい、バラ色の頬とキラキラ光る瞳のおじいさん。それはまさに、世界中で親しまれ続けるサンタクロースの姿なのです。

サンドブロムの作品群を動画で紹介

※英語版となります